釈迦如来とは何か
釈迦如来(しゃかにょらい)は、仏教の開祖である釈迦(ゴータマ・シッダールタ)が悟りを開いた後の姿を指す尊称です。
「如来」とは「真理から来た者」を意味し、煩悩を断ち、悟りを得た存在に与えられる称号です。
釈迦如来は、仏教における最も基本的かつ中心的な仏様です。
インドの王子から悟りの仏へ ― 釈迦の生涯
釈迦は紀元前5世紀頃、インド北部のシャーキャ族の王子として生まれました。
豪奢な宮殿で育ちながらも、老・病・死という人間の苦しみに直面し、29歳で出家。
6年にわたる苦行の末、菩提樹の下で瞑想し、35歳で悟りを開いたとされます。
その後、80歳で入滅するまでの45年間、各地を巡って教えを説き、多くの弟子を育てました。
仏像としての特徴と象徴性
釈迦如来像は、こうした釈迦の生涯の中でも「悟りを開いた後の姿」を表現しています。
特徴としては、螺髪(らほつ)と呼ばれる巻き毛、肉髻(にっけい)という頭頂部の隆起、白毫(びゃくごう)と呼ばれる額の白い毛などがある。衣は質素な僧衣一枚で、装飾は一切ありません。
手の印相(いんそう)は、右手を上げて恐れを取り除く「施無畏印」、左手を下げて願いを受け入れる「与願印」が代表的です。
日本での信仰と造像の広がり
日本においては、飛鳥時代に仏教が伝来すると、釈迦如来は最も早く信仰の対象となりました。
法隆寺金堂の釈迦三尊像(飛鳥時代)はその代表例であり、中央に釈迦如来、脇侍に文殊菩薩と普賢菩薩を従える形式は「釈迦三尊」として広く知られています。
また、京都・清凉寺の「清凉寺式釈迦如来像」は、釈迦の生前の姿を写したと伝えられ、全国に模刻が広まりました。
宗派を超えて受け入れられる釈迦如来
釈迦如来の信仰は、宗派を問わず広く受け入れられています。(仏教の開祖なのでそれはそうだろうと思います)
上座部仏教では唯一の仏として崇められ、大乗仏教では「応身仏」として衆生を救うために現れた存在とされます。
真言宗では、大日如来が宇宙の真理そのものでたり、他の仏が大日如来の化身であるとされる為、恐らく釈迦如来も大日如来の化身とみなされていると思われます。
浄土宗や浄土真宗では阿弥陀如来が中心となりますが、釈迦如来はその教えを説いた仏として重要な位置を占めています。
十三仏の一尊としての役割
また、釈迦如来は「十三仏」の一尊としても信仰され、死後14日目(二七日)の導師仏とされます。
これは、死者の魂が迷わぬよう導く存在としての役割を担っていることを意味します。
ご利益と現代における意義
釈迦如来のご利益は、特定の現世利益に偏らず、「正しい道へと導く」「智慧を授ける」「悟りへの道を示す」といった根本的な救済にあると言われています。
人として生まれ、苦悩を経て悟りに至ったその姿は、私たち一人ひとりにも仏性が備わっていることを示唆しています。
現代においても、釈迦如来は単なる信仰対象にとどまらず、「生き方の理想像」として多くの人々に影響を与え続けています。
静かに微笑むその姿は、苦しみの中にあっても希望を見出す力を私たちに与えて下さいます。
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