広島市中区立町の商店街の一角、にぎやかな通りからふと裏路地に足を踏み入れると、そこに現れるのが中の棚稲荷神社(なかのたないなりじんじゃ)です。
赤い鳥居が視界に飛び込んできた瞬間、思わず「おおっ」と声が漏れるほどの存在感。
街の喧騒の中にぽっかりと開いた静謐な空間は、まるで時間がゆっくりと流れているかのような不思議な感覚を与えてくれます。

商人の町に根ざした稲荷信仰

中の棚稲荷神社の創建年代は明確ではありませんが、宝暦8年(1758年)にはすでにこの地に祀られていたとされ、当時は魚市場の守り神として信仰を集めていました。
御祭神は正一位稲荷大明神。京都・伏見稲荷大社からの分霊と伝えられ、江戸時代には広島城下の著名な稲荷神社六社の一つに数えられたこともある由緒ある神社です。
昭和20年の原爆により社殿は焼失しましたが、地域住民の手によって昭和30年に再建され、現在も地元の人々によって大切に守られています。
夜の参拝で感じた「地域の神さま」
夜に参拝させていただいた事もあります。
赤い鳥居をくぐり、灯りに照らされた社殿に近づくと、なんと中には恐らく地域の方々?が集まっていました。
神社というと厳かな場所というイメージがありますが、ここでは神さまが地域の暮らしの中に自然と溶け込んでいることを実感しました。
中の棚稲荷神社は、まさに「地域に愛される神社」そのものでした。
九美の狐と遊び心
この神社のもう一つの魅力が、オリジナルキャラクターの「九美の狐(くみのきつね)」です。
九尾の狐をモチーフにしたこのキャラクターは、デフォルメされた姿がとても愛らしく、アクセサリーなどのグッズにもなっています。
商店街の一角にある神社らしく、伝統と現代の遊び心が絶妙に融合しており、若い世代や観光客にも親しみやすい雰囲気を醸し出しています。
謎解きイベントで神社がもっと身近に
中の棚稲荷神社は、イベントにも積極的に参加しており、たとえば「西国街道 謎解き宝探し」といった企画にも登場しています。
こうした取り組みは、神社を単なる信仰の場にとどめず、地域の文化や歴史を楽しく学べる場として再発見させてくれるものです。
神社が「遊び」のフィールドになることで、子どもから大人まで幅広い世代が自然と足を運ぶようになり、信仰と日常がより近いものになっていると感じました。
アクセスと基本情報
所在地:広島県広島市中区立町1-11
- 最寄り駅:広島電鉄「立町」電停から徒歩約2分
- ご利益:商売繁盛・恋愛成就・家内安全
- オリジナルグッズ:九美の狐アクセサリーなど
おわりに
中の棚稲荷神社は、決して大きな神社ではありません。
しかし、赤い鳥居が放つ鮮烈な存在感、地域に根ざした温かさ、そして現代的な遊び心が見事に調和した、唯一無二の魅力を持つ場所です。
広島の中心街にありながら、ふと立ち寄ることで心がほぐれるような、そんな神社。
中の棚稲荷神社は、日常の中にある小さな非日常を感じさせてくれる、素敵な場所です。

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