感想
日本人の精神文化に深く根ざした古神道の本質と、その実践的な行法について丁寧に解説した一冊です。
著者は山蔭神道の修行を長年にわたり積み重ねてきた人物であり、本書では単なる知識の紹介にとどまらず、実際に体験し、継承してきた祈りや瞑想の技法を通じて、古神道の「生きた知恵」を現代に伝えようとしています。
特に印象的なのは、「禊」や「祓」といった浄化の概念が、日常生活の中にも自然に息づいているという視点です。
たとえば、毎日お風呂に入るという行為も、身体と心を清める「禊」として捉えることができるのではないかと思いました。
私たちが無意識のうちに行っている習慣の中に、古神道の精神が今もなお息づいているのだと気づかされます。
また、古神道における瞑想法の紹介も興味深く、特に「アジマリカム」という大神呪(おおかしんじゅ)の存在には強く惹かれました。
この言霊にはどのような力が宿っているのか、実際に唱えてみたくなるような神秘性があります。
瞑想を通じて神とつながるという感覚は、現代のスピリチュアルな実践とも共鳴する部分があり、古代の知恵が今なお有効であることを感じさせます。
さらに、祈祷が願意によって変化するという点も印象的でした。「合格祈願」が「決定成就」、「病気平癒」が「病気解除」となるように、深い意味と意図が込められているのです。
本書を通じて、古神道は決して過去の遺産ではなく、今を生きる私たちの中に脈々と流れている「生きた道」であることを実感しました。
日々の暮らしの中に祈りと感謝の心を取り戻すことが、現代人にとっての癒しや再生につながるのではないか――そんな気づきを与えてくれる一冊です。
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