試聴
蜘蛛収録CD紹介
・シングル「灯」通常盤B-TYPE収録
蜘蛛感想
ひたすらドラムが強調されているかと思う程にギターまでもが低音でリズムを刻むイントロは、捕食者の接近を表現しているかのようです。
“搦め捕られてたことに気付かず
無様に踊るは雁字搦めの檻喰らうのは肥えた欲の塊
津液粘つく天秤の皿の上”
―「蜘蛛」歌詞(作詞:酒井参輝)より引用―
不気味なギターの音と共にAメロで語られるのは、捕食者の存在と、なにも気付かずに搦め取られ檻の中に入れられた、哀れな餌の存在です。
Aメロが終わると、歌詞には描かれていない、セリフが聴こえて来ます。
「それはたった一つの救いであり、それはたった一つの希望であり、
全てをかなぐり捨ててでも縋り付く他何も無かった
人は誰しもが運より幸を真に願い、負の運こそなりそこが涅槃であると信じるばかり」
……と言っている様に思います。
後半がやや聴き取りにくく完全に合っている自信はありませんが……
「涅槃」とは仏教用語で悟りの境地の事を意味し、転じてお釈迦様の入滅を意味しているとも言われます。
蜘蛛という単語に仏の用語、ある一つの作品が思い浮かんで来ませんか?
“救いを垂らし手招いても
醜態晒す哀れな偽善の狂騒
掴んだ一縷の光も あれよあれよ真っ逆様落ちる落ちる…奈落の底
この手を引く絶望的
落ちる落ちる…奈落の底
振り出しにすら戻れぬ”
とても聴きやすく、走り回るようなストリングスが彩るカッコ良いメロディのサビで描かれるその光景で浮かぶ物語……それは、芥川龍之介作「蜘蛛の糸」。
もし読んだ事の無い方、読んだけれどどんな話だったか忘れてしまった方の為に、Wikipediaのリンクを貼っておきます。
天から垂らされた救いの糸を掴むも、救われたいという気持ちが昂りすぎて醜態となり……
糸が切れて、奈落の底へ落ちて行く様子が描かれています。
聴きやすいサビを挟む事で、再び低音でヘヴィなサウンドへ戻っていく「落ちる落ちる~」の部分が、まるで本当に落下しているかのような感覚さえ感じるようになります。
救いの糸を掴み登り始めたふりだしにすら戻る事は出来ません。
有名な作品を題材にしているこの楽曲、是非一度聞いてみてください。
リンク


コメント