「盲/己龍」を聴いてみた!

音楽感想

試聴

盲収録CD紹介

・アルバム「百鬼夜行」収録

盲感想

「盲」は「めくら」と読み、意味は目が見えない人を示します。

この曲の作詞者であり己龍のボーカル、黒崎眞弥くろさきまひろさんは、実は先天性の「網膜色素変性症」という進行性の目の病気を患っており、光のある場所ではものを見る事が出来るが、暗所では殆ど物が見えない、という状態のようなのです。

私も時折、ライブハウスで暗転中にスタッフに手を引かれながら登場する眞弥さんの姿を目にします。

そんな眞弥さんだからこその、真に迫る歌声が心を打つ、己龍の名曲の1つです。間違いありません。

曲を聴いてみると、切なく鳴り響くピアノから、ストリングスを取り入れた壮大で感情的なイントロへと変化し、再びシンプルなピアノと共に独白するかの様なAメロへ。

“極彩にくらむ光
瞼を縫い付ける
羅列のつづりをすす
這いずり廻る舌 うごめいた”
―「盲」歌詞(作詞:黒崎眞弥)より引用―

この歌詞はすこしおどろおどろしいですが、己龍としての活動の事かもしれない、と思いました。
グッズの為の光を使った写真撮影、羅列の綴りは曲を作詞する事、舌が蠢くのはそれを歌う事。

その日の活動も終え、一人眠る時にどうしても不安に襲われてしまう夜があるのでしょう。何故こんな目で生まれてしまったのかと絶望を感じた夜もあるのかもしれません。

した肌は灰にうずもれ
針の音のあしおとが呻き”
―「盲」歌詞(作詞:黒崎眞弥)より引用―

針の音の足音、とは夜の静寂の中で流れる時計の針の事であり、病の進行の音、と捉えても良いのかもしれません。
跫、という漢字は恐の上半分が使われていますから、少し怖い感じもします。

まだらむしばむ黒点が 佳景かけいを侵食してゆく
かざてのひらやがて黒い陽に呑まれ 瞼裏まなうらいた”

―「盲」歌詞(作詞:黒崎眞弥)より引用―

こちらは最初のサビ前の歌詞なのですが、徐々に視界に黒い点が増えてゆき、やがては自らのてのひらすらも黒く見えなくなってゆく……そんな光景が目に浮かびます。

盲とは、黒崎さんが彼自身の事を作詞した曲なのではないかと思います。

佳景とは良い眺めの事を示しますが、ボーカルの黒崎さんにとって佳景とは恐らく、多くのファンの前で自らの歌を披露出来る、ライブ会場そのものを示すのではないでしょうか?自らのライブ会場に足を運んでくれるファンの顔が、病に侵食されて行く……

眞弥さんの事情を知りながらこの曲を耳にすると、ギターなどの楽器が、眞弥さんの気持ちに寄り添いながら一緒に泣いている様に聞こえてくるから不思議なものです。

また、眞弥さんにしかわからない気持ちがあるからこそ、それが歌となり表現された時に、聴く私達に「感情のこもっている歌だ」と思わせるのだと思います。

サビの辺りでは己龍のライブの光景が歌われていると思います。
何故なら己龍には「暁歌水月きょうかすいげつ」という曲があり、ライブ本編のラストで歌われる事が多いのです。しかも振り付けは手を振る振り付け。

暁歌水月あかつきに手を振り 遠ざかる影”
―「盲」歌詞(作詞:黒崎眞弥)より引用―

これがライブの光景でなくて何の光景なのでしょう?

ファンがにやりとしてしまう仕掛けがこんな所に仕掛けられています。

今猶いまなおれ」は緩やかに此の眼を蝕み続けて”
―「盲」歌詞(作詞:黒崎眞弥)より引用―

最後のサビでは、今も常に病が進行し続けている事で、やがて否応なく訪れるであろう日が、近づきつつある事を示しています。

その日とは、己龍のボーカルとして活動出来なくなってしまっているであろう日。

“空虚な残響を反響するこえは…
何を遺し、何処へ向かう”
―「盲」歌詞(作詞:黒崎眞弥)より引用―

その日、もはやファンが視認出来なくなり、誰かがいるのかいないのかも分からないステージの上で放つ自身の歌声は、誰かの心に何かを遺せているのだろうかと、思いを馳せているのでしょう。

その日が来ない事を、ファンとしては願わずにいられませんが、万が一来てしまった際には、その歌声はファンである私達の心にしっかり残されていると、伝えたいものですね。

感情のこもった歌が聴いてみたい方はぜひ、一度聴いてみては如何でしょうか?

リンク

盲(百鬼夜行収録)/己龍の歌詞|『ROCK LYRIC』

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