「お寺×投資×SDGs」感想
「仏教」と「投資」という、一見すると相容れないテーマが意外な形で結びついていることに深い興味を持ちました。
従来、仏教の世界は「無欲」や「清貧」といった価値観に重きを置くと考えられがちですが、本書はその伝統的なイメージを丁寧に捉え直しつつ、時代の変化に対応するための実践的な提案をしています。
かつてお寺は地域のコミュニティにおける経済的・精神的な中心であり、寺領の管理や人々の支え合いの中で、ある意味で銀行のような機能を果たしていたのではないかと感じました。
しかし現代では、少子高齢化や檀家制度の崩壊によって収入源が減少し、多くの寺院が経営難に直面しています。そうした状況の中で、寺院を持続可能に運営するために「資産運用」という手段に光を当てた点は、新鮮で現実的な提言だと感じました。
著者は、仏教の本質を「労働しないこと=煩悩を手放すこと」と捉えつつ、現代の世俗的な環境の中では、労働によらない収入手段として投資を活用することが可能だと述べています。
今後、死亡者数の増加により一時的には葬儀や法事の需要が増えると予想される一方で、それが落ち着いた後には、さらに厳しい経営状況が訪れる可能性があるという見立てにも、説得力がありました。
また、僧侶のあり方についても触れられており、仏門に入るきっかけが「家に生まれたから」である人もいるようですが、本来は「自らの意志で悟りを求めること」であるべきだとも思います。
それを実現するためには、寺院の経営が安定しており、出家したいと願う人々が安心して生活できる環境づくりが欠かせません。
資産運用による収益は、そうした理想の寺院運営を支える手段として位置づけられているのです。
投資という観点では、専門的な入門書に比べて内容は控えめですが、本書の想定する読者が「寺院の未来に悩む住職」であることを考えると、投資の重要性に気付く“入口”として非常に効果的な構成になっています。
寺院特有の資産である本堂や庫裏といった建築物も、経済的観点からどう捉えるかという視点は、宗教施設の運営を見直すうえで示唆に富んでいます。
投資という観点では、専門的な入門書に比べて内容は控えめですが、本書の想定する読者が「寺院の未来に悩む住職」であることを考えると、投資の重要性に気付く“入口”として非常に効果的な構成になっています。
寺院特有の資産である本堂や庫裏といった建築物も、経済的観点からどう捉えるかという視点は、宗教施設の運営を見直すうえで示唆に富んでいます。
総じて、本書は仏教の精神を損なうことなく、時代に即した形で寺院の持続可能性を模索する良書でした。お寺の未来に真剣に向き合うための第一歩として、広く読まれるべき一冊だと思います。
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