THE FINAL/Dir en grey~レビュー157曲目~

~THE FINAL収録CD紹介~

・メジャー16枚目のシングル「THE FINAL」収録

・メジャー5枚目のアルバム「Withering to death.」収録

・メジャー2枚目のミニアルバム「THE UNRAVELING」収録(再録版)

・ベストアルバム「DECADE 2003-2007」収録

・ベストアルバム「VESTIGE OF SCRATCHES」収録(再録版)



~THE FINAL感想~

まるで金属質なもので出来ている地下室の中にいるかのような音にバンドサウンドが絡んで行きます。

重厚感と神秘性が同居しているようなイメージを抱きますね。

“解けてしまう意図を見つめ…
文字に出来ない左手です
血を流す度に生きてる理由わけ
見出す言葉が鮮やかで”
―「THE FINAL」歌詞より引用―

恐らく、主人公は既に左手を切ってしまっているのではないでしょうか。
そこから血が一筋流れる様を糸が解けていく様子に例え、引いては自分の生きたかった意味が無くなり死にたくなった様子と捉え、「解けてしまう意図」としたのではないでしょうか?
そして、その血の糸を眺めながら、生きる意味を痛みと共に思い出しているのではないでしょうか。

“手の中には愛すべき人さえも
華々しく散って
手の中には生きた意味刻んでも
虚しき華と散る
The final”
―「THE FINAL」歌詞より引用―

その手で守るべきだった愛する人達は既に主人公の前から姿を消してしまいました。
リストカットをして折角生きる意味を思い出しても、その意味は思い出した側から無意味なものとなり消えていきます。愛する人を失くした事により主人公の感じている絶望の前では無力なのです。

“So I can’t live…
そう無くしたモノはもう産まれない
生きてる証さえ求められない歌”
―「THE FINAL」歌詞より引用―

無くなってしまったものは、同じものはもう二度と戻って来る事はありません。
この歌は、そんな痛み、絶望をただただ吐き出す為だけの歌で、生きていた証になる事を作り手が求めていない……そんな歌なのだという事なのでしょうか。

この曲には救いはあまり感じられません。だからこそ痛みに徹底的に寄り添ってくれる……そんな楽曲だと思います。



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Dir en grey THE FINAL 歌詞―J-Lyric.net

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リブラ/ムック~レビュー156曲目~

~リブラ収録CD紹介~

・16枚目のシングル「リブラ」収録

・8枚目のアルバム「志恩」収録

・ベストアルバム「BEST OF MUCC」収録




~リブラ感想~

ベースから先行し雰囲気の重たい音楽が始まったかと思いきや、シンプルで寂しい雰囲気を持つ伴奏と共にボーカルの逹瑯さんが低く呟くように歌い出します。

“利腕に現実をとり もう片腕に道徳をかざし
胸の奥に愛を灯して 頭の中で天秤にかける”
―「リブラ」歌詞より引用―

色々な物を天秤にかける主人公がいます。
利腕と、利腕でない腕では利腕の方が使いやすく強いですから、主人公の持つ道徳は時に現実に負けうる可能性があるという事ですね。
天秤にかける時、中心の針は両方がつり合えばやがて中心に戻りますが、それまでの間はやや揺れます。どちらかが重ければどちらか片方に振り切れます。
主人公が胸の奥に灯す愛は、心からの愛なのでしょうか?それとも道徳観念による建前の愛なのでしょうか?それとも両方がバランス良く混在する愛なのでしょうか?

“感情は邪魔になるだけの世界さ 撃ち殺してくれよ
天秤にかけたのは誰?算盤で弾くのは誰?
ハーメルンの笛吹きは誰?狼少年は一体誰?
そんなのどうでもいいほど今、君を愛しているよ”
―「リブラ」歌詞より引用―

感情が邪魔になるから殺して欲しいと懇願しておきながら最後には「愛しているよ」と感情を表に出して締め括っている箇所です。
周りからはどういう人間なのか判断しようとしたり利用価値を判断しようとしたりとレッテルを貼ろうとする声、導こうとする声、嘘をついて騙そうとする声、色んな声が聞こえてきますが主人公が感じている愛の前にはそんなものはどうでも良いようです。

“花よ今咲き誇れ 僕に教えておくれ
今ここに生きる意味を 明日が来る理由を”
―「リブラ」歌詞より引用―

サビであるこの部分は今までの呟くような歌声から一転、力強いメロディが付けられています。

恐らくこの花は愛している君の事であり、その愛によって生きる意味を得ようとする主人公の心情が描写されています。

“利腕に欲望を持ち もう片腕に背徳を隠し
胸の奥に愛を閉ざせば 頭の中で聖者が笑う
空き地に咲く健気な花
降り注ぐ光を奪うビルがそびえ立ち
人々はそのビルに目を輝かせ
やがて花は呼吸を止めた
風が只、優しく撫でた
風だけが優しく撫でた”
―「リブラ」歌詞より引用―

主人公の天秤が手にしているものは、現実は欲望へと変化し、道徳は反して背徳となっています。
ここに登場する花とはやはり愛している君の事であり、でもその君は何らかの外的理由によって亡くなってしまったのでしょうか。
喪失感を覚える主人公の心に、思い出だけが優しく残ります。

“生きる事 其れは何も見えねぇ闇の中をさ迷う様な
死ぬ事 其れもまた闇で終わりは決して始まりではない
だからこそ今闇を照らす閃光になるよう生命燃やせ
輝きを放つんだ 生きてる証 儚く強く”
―「リブラ」歌詞より引用―

メロディのあるサビの部分を除けば呟くように歌っていた逹瑯さん。サビを含めても、この歌詞の部分が一番感情を爆発させて叫んでいるように感じたので、一番伝えたいメッセージはこの部分であると判断し、普段は一番程度で終わる歌詞解釈を、ほぼフル引用みたいな形にさせていただきました。

主人公は愛する者を亡くした事により、生きていても、例え死んだとしても死後の世界で愛する者と出会って幸せになれる訳でも無いので、深い絶望に囚われてしまったのだと思います。
そして、どう転んでも絶望ならば思い出を胸に悔いなく生き抜く道を選びます。

“花よ今咲き誇れ 君が教えてくれた
今ここに生きる意味を 明日がくるわけを
いつの日か死にゆく僕は 君に何が出来るだろう
陽は昇り光を注ぐ永久に この世界に”
―「リブラ」歌詞より引用―

ここでいう花は、心の中にいる、愛する君の事だとすると今までの私自身の解釈と相違は出ないかな、と思っています。
愛する君が教えてくれた生きる意味を胸に、天寿を全うし死ぬその日まで、生き抜いていく覚悟が描かれています。

歌詞の中で天秤にかけられているものはありますが、本当にこの曲が天秤にかけているのは、絶望と希望なのかもしれませんね。




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ムックリブラ

ムック リブラ 歌詞―J-lyric.net

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アンクドファラオ/Babykingdom~レビュー155曲目~

~アンクドファラオ収録CD紹介~

・5枚目のシングル「アンクドファラオ」収録

・1枚目のアルバム「AGE+PLUS」収録



~アンクドファラオ感想~

ファラオというだけあって、イントロではエジプトを思わせる民族調の楽器の音色が使われています。

蛇使いが蛇とか出して来そうなイメージですね。
タイトルの「アンク」とは「生命」或いは「生きること」の意味で、「ファラオ」は王を示します。ツタンカーメンは有名なファラオですね。
つまり「アンクドファラオ」は恐らく「生きていた王」という意味で良いかと思います。もう既に死んでいるので、英語的な変化をさせて、単純な過去形としての表現です。
もしくは、既に死んでいる筈なのに何か超常現象のような力でまだ「生きていた」……と捉えても良いのかもしれません。

では歌詞を紹介していきます。PVからの書き出しです。

“闇夜 光射す
九つの神
喉を切り裂くは
黄泉の影”
―「アンクドファラオ」歌詞より引用―

九つの神と言うのは、エジプト神話の中の、ヘリオポリス創成神話に関わる、アトゥム、シュー、テフヌト、
ゲブ、ヌト、オシリス、イシス、セト、ネフティスの九柱の神々の事でしょう(Wikipediaで簡単に調べて見ただけですが、実際には諸説あるようです)

“ミイラ目を覺ませ…
ミイラ動き出せ…
皆此處へ還る
Don’t die!We revive!
ミイラ目を覺ませ…
ミイラ動き出せ…
皆廻り廻る
Don’t die!We revive!”
―「アンクドファラオ」歌詞より引用―

死体である筈のミイラに呼びかけています。ミイラがあるという事は死体が埋められている場所なのですから、人は皆死ねば体も魂もその場所へ還るという事です。
そしてミイラが動き出すということは……
ほら、英語ではありますが俺達は死んでいないぞ!復活したぞ!という掛け声が聴こえてきます。

“孤独に溺れた幼き命
消された歴史に埋もれゆく”
―「アンクドファラオ」歌詞より引用―

エジプトのツタンカーメン王の墓に、ツタンカーメンの子供の可能性が高い、胎児のミイラがあるそうです。
一体何があったのか、当時の記録などは無いのだと思います、物的証拠を研究しいくら解き明かしても、そこには解き明かされずに消えてしまった歴史がある筈なのです。

“僕を愛してよ 気付いてよ
仮面の裏側の『心』
逝かせてよ 聴かせてよ
雁字搦めの鎮魂歌レクイエム
其の場凌ぎの愛など僕は要らない
永遠とわの忠誠を捧げておくれよ”
―「アンクドファラオ」歌詞より引用―

王という立場に君臨している以上、そこに近付く人に純粋な愛などないのかも知れません。でも王という立場ではなく、純粋に自分自身を見て愛して欲しかった、そんな人に出会いたかった……そんな感情が読み取れます。
もはや彼は死してミイラとなっている身ですから、永遠とは死して尚続く、本当に永遠の愛を欲しがっているのでしょう。

ホラーな楽曲かと思いきや、恋愛曲としての切なさを表現した一面もあるこの曲、是非一度聴いてみて下さい。



~リンク~

アンクドファラオ(full MV)/Babykingdom

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「闇夜のセレナーデ」/ぞんび~レビュー154曲目~

~「闇夜のセレナーデ」収録CD紹介~

・1枚目のアルバム「ぼくらはみんな死んでいる。」収録

・配信限定アルバム「はじめてのぞんび」収録




~「闇夜のセレナーデ」感想~

重厚なバンドサウンドがカッコ良さを、イントロやサビで利用されているストリングス系の音色が、ロマンチックさを演出するポップでキャッチーなメロディの楽曲です。

とても、ぞんびという名前のバンドが奏でている楽曲とは思えませんが、バンド名と楽曲の印象にギャップを持たせる事により双方を引き立たせる戦略なのかもしれません。

それでは歌詞解釈に進んでいきましょう。

“マイナスの感情渦巻き
狂い堕ちてく 奈落の底まで
狭く息苦しい部屋の片隅で ただ強く生きるから”
―「闇夜のセレナーデ」歌詞より引用―

マイナスの感情、それは怒りかもしれませんし悲しみかもしれません。もしかしたら自分はダメだ、死にたい、といった自責の感情や希死念慮かもしれません。私は希死念慮の方が近いと考えていますがどうなのでしょうか?
けれど、実行に移さずに生きている。それをポジティブに感じられる表現で歌っています。

“そっと射し込む光のように舞い ゆらめいて
ほんの僅かな 希望と共に歌う 心震わせて”
―「闇夜のセレナーデ」歌詞より引用―

「狭く息苦しい部屋」は暗い部屋ではありますが、小さな窓くらいはあるイメージなのでしょうか。
そこから微かに光が射し込む為、それを僅かな心の縁にして歌う事で、歌詞の主人公の身に降りかかる絶望に立ち向かっているのでしょう。

“鮮やか 白く光る銀の世界が
悪夢と知るのなら
塞いだ 過去の痛み、苦しみさえも
幻想に溶けていく
深く沈む 夜の空に
響け「闇夜のセレナーデ」”
―「闇夜のセレナーデ」歌詞より引用―

白く光る銀の世界が悪夢とはどういう事なのか、個人的な考えとしては、今まで当たり前であった事が当たり前でなかった事を知る事により、それまでの自身の置かれていた環境が本当に悪夢だったのだと改めて再認識する事をこのように表現しているのではないかと思います。
それまで当たり前だった悪夢が悪夢である事を再認識させられるのですから、銀の世界もまた悪夢なのです。
しかし、それは同時に、それを認識出来るくらい幸せな輝かしい環境に身を置けるという事でもあるので、痛みや苦しみが昇華されて行く……という状況も同時に発生しうるのです。

歌詞から光景を想像すると、光と闇の対比の描き方が美しい楽曲ですので、是非今絶望しかないと思っている方にも一度聴いてみていただきたい楽曲です。




~リンク~

ぞんび「闇夜のセレナーデ」【OFFICIAL MUSIC VIDEO[Full ver.]

秘事/R指定~レビュー153曲目~

~秘事収録CD紹介~

・3枚目のアルバム「VISUAL IS DEAD」収録



~秘事感想~

どこかダークで、しかしポップな、ぐるぐるした印象のギターリフのイントロから始まるこの曲。

“秘め事を 一つだけ 君に教えてあげよう
その代わり 約束だ 内緒にしててね”
―「秘事」歌詞より引用―

秘め事を教えてあげよう……と歌詞も、どこかダークな雰囲気を漂わせる始まり方をしています。
一つだけ教えてあげるのですから、多分主人公にはこの曲で公開される以外にも秘め事が何かあって、その中の一つを特別に教えてあげよう、という事なのだと思います。
人は特別感を煽られるのに弱いですから、この始まり方でもう既にハートを掴まれてしまう方もいらっしゃるかもしれませんね。

“僕には 最愛の 幼い愛玩人形ワイフがいてね
忠実に飼いならす 未熟な果実さ”
―「秘事」歌詞より引用―

例えば人を人形のように扱っている、或いは人形を人のように扱う。
どちらにしても曲の展開が進むにつれ。アブノーマルな雰囲気が増していきます。

“縛り付けておきたいけど君はきっと嫌がるのでしょうか
舌舐めずり静の愛撫で君を感じてる不埒な夜に”

「静」ではなく違う漢字ではないかと思える程に妖しいムードが炸裂する歌詞ですがメロディとしては聴きやすいです。
主人公は君を、手元で愛している愛玩人形のように愛したいのでしょう。もしかしたら愛玩人形は一体、或いは一人だけではなくコレクションのように複数いたりするのかもしれません。

最初に特別感を煽った後で、畳み掛けるように襲いかかる妖しくアブノーマルな世界観の楽曲、果たして貴方はこのR指定の怒涛の攻めに耐えられるでしょうか……?



~リンク~

秘事(PVです。流血表現はありませんが監禁表現・エロ表現が少なからずありますので極端に苦手な方は閲覧注意です)