広島市南区北大河町にひっそりと佇む真幡神社(まはたじんじゃ)は、地域の人々に「黄幡社(おうばんしゃ)」として親しまれてきた歴史ある神社です。
住宅街の一角にありながら、境内に一歩足を踏み入れると、そこには静謐な空気と、時を超えて受け継がれてきた信仰の気配が漂っています。
この記事では、真幡神社の由緒や見どころに加え、実際に参拝した際に感じた印象を交えてご紹介します。
創建と由緒

真幡神社の創建は元和3年(1617年)。
当時、この地域は海陸の交通が困難で、荒天時には災難が頻発していたと伝えられています。
そこで、地域の人々が神の加護を願い、社殿を建立し「黄幡神社」を勧請したのが始まりです。
御祭神は泉津道守神(よもつちもりのかみ)で、黄泉の国を守る神として、災厄除けや道中安全のご利益があるとされています。
相殿神は寒座三柱神(さやりますみはしらのかみ)、金山毘古神(かなやまびこのかみ)となっています。
被爆を耐えた祈りの場

真幡神社は、1945年8月6日の原爆投下の際、爆心地から約3.44kmの距離にありながらも倒壊を免れました。
現在も当時の姿をとどめており、被爆建物として広島の歴史を静かに物語っています。
境内に立つと、戦火をくぐり抜けた建物の存在感が、言葉にできない重みとともに迫ってきます。平和の尊さを胸に刻む場所として、訪れる人々に深い感慨を与えてくれます。
神仏習合の名残を感じて

真幡神社のすぐ隣には、地蔵寺というお寺が建っています。
神社と寺院が隣接しているこの風景は、かつての神仏習合の時代を思わせるものであり、明治の神仏分離令以前には、神と仏が共に祀られていた日本の宗教文化の名残を感じさせます。
神社の鳥居をくぐり、ふと横を見ればお寺の鐘が見える――そんな光景に、時代の重なりと信仰の多様性が静かに息づいていることを実感しました。
狛犬の背中に宿る力強さ

境内の石段を上ると、拝殿の前に一対の狛犬が鎮座しています。
正面から見ると凛々しく、どこか厳かな印象を受けますが、参拝後帰るときにふと背後から見つめてみると、その背中には頼もしさと包容力のようなものを感じました。
まるで、町の人々の生活をそっと見守ってくれているかのような、静かな力強さがそこにはありました。

境内の風景
神社は北大河町の山裾に位置し、住宅街の中にありながらも、自然と調和した落ち着いた雰囲気を保っています。
静けさの中に、自然と人の営みが溶け合うような空間が広がっており、心を整えるには最適の場所です。
地域とのつながりと例祭
真幡神社では、毎年10月第3日曜日に例祭が行われます。
かつては旧暦の9月1日が例祭日であり、秋の実りに感謝する意味合いも込められていました。
現在も地域の人々が集い、神事や奉納行事が執り行われるこの祭りは、地域の絆を深める大切な行事として受け継がれています。
アクセス情報
所在地:広島県広島市南区北大河町23-17
- 最寄り駅:広島電鉄「皆実町二丁目」から徒歩約20分
- バス利用の場合:「旭町」バス停から徒歩約4分
- 電話番号:082-281-4538(邇保姫神社)
おわりに
真幡神社は、派手さや観光地的な賑わいはありませんが、歴史と信仰が静かに息づく場所です。
隣接する地蔵寺との共存は、神仏習合の記憶を今に伝え、狛犬の背中には、地域の人々を見守るような温かさが宿っています。
被爆を乗り越えたその姿は、平和の尊さと人々の祈りの力を静かに語りかけてくれます。
広島を訪れる際には、ぜひこの小さな神社に足を運び、心を澄ませるひとときを過ごしてみてはいかがでしょうか。


コメント